現代の名工受賞 北原 憲明

一流の技能者として可能性を広げたい

2017年現代の名工受賞 北原 憲明

きたはら・のりあき/1992年 オリンパス(株)(現(株)エビデント長野)入社
入社以降、医療用顕微鏡の金属加工に携わる。
2013年技能グランプリ・フライス盤職種優勝、「信州の名工」認定。
2017年「現代の名工」認定。最近の趣味は家族旅行。

北原 憲明

受賞をきっかけに視野が広がりました

入社からずっと長野でモノづくりに没頭する日々を過ごしていましたが、平成29年の「信州の名工」受賞をきっかけに、自分の会社人生が予想外の方向へと動き出しました。中でも大きかったのは、当時の長野オリンパス(現エビデント長野)代表として、製造本部が主催する「基礎技術チーム(通称FTT)」のメンバーに任命されたことです。
FTTは、各工場の技術・技能者が中心となって、「よいところを学び合い、ノウハウを共有し、シナジー効果を出そう」と活動しているワンオリンパスの組織です。年2回、各工場を順に巡って現場の問題をヒアリングし、実際にその工程を見て意見を交換、改善の方法を探っていくという取り組みを行っています。それまで一度も長野から出たことがなかった自分が、医療の製造現場や海外に出張する機会が得られるようになりました。

やはり外へ出ると、視野がぐんと広がります。会津や青森を訪問した際は、医療特融の微細な部品の製造方法や設備の考え方にとても刺激を受けました。顕微鏡部品の生産は段取り変えが多く、一種類を数個作ったらすぐ別の部品に取り掛かるという多種少量生産ですが、医療はひとつの部品を何千個も生産します。そのため、機械を入れて安くぴちっと作る工夫が完璧に出来ていて、どれも効率的に感じました。
それまで長野には「人の作業を機械に置き換える」という考え方があまりありませんでした。例えば部品を削った後に出る“バリ”は、顕微鏡で見ながら一つひとつ手で取るのが当たり前の工程とされていました。しかし、これを機械である程度取り除くことができれば、大分時間の短縮になります。時間のかかる大変な作業を最小限にし、多種少量でも効率化を図る方法を作り出すことに興味が湧きました。

コミュニケーションの大切さ

また、海外出張では、生の英語に触れるという新しい経験がありました。以前は、自分はモノづくりで一生生きていく、英語なんて必要ないとずっと思っていました。でも初めての海外出張のとき、スケジュールの一部にイタリアで開催される世界最大の国際金属加工見本市「エモハノーバーショー」の訪問が含まれていたのです。
実は私は年休を取って、メカトロテックやJIMTOFを見に行くくらい大の展示会好き。金属加工の最新設備が揃っている中から、顕微鏡部品の大きさや形状に合いそうなものが見つかると、ワクワクしてじっくり観察しています。エモショーの広い会場にも、工作機械や工具が出展されていて、会場に一歩入ったところから感動しました。
ただ、言葉が通じず・・・(涙)英語ができる人も一緒でしたが、通訳してもらいながらだと、なかなか突っ込んだ質問はできません。会議のときは通訳がいても、こうした展示会や会食などの場で、自分でコミュニケーションできる力があれば、さらに世界が広がります。英語に対する考え方がガラッと変わり、社内の英会話教室へ行き始めました。

こんな風に、ただ目の前のことにひたすら取り組んできたところ、今回の「現代の名工」受賞のニュースが。「こんなに素晴らしい評価をいただいてしまった」という気持ちですが、自分の技能が世の中に認められたことは、素直に嬉しかったです。
今後は製造の問題を解決しつつ、社内外の人材育成に取り組み、自分と同じ熱い思いを持った人材をどんどん増やしていけたらと思っています。しかし、自分の原点はやっぱりモノづくり。技能者であるうちは、製品の鍵となるレベルの高い加工にどんどん挑戦し、自分の力を試し続けていきたいです。

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