黄綬褒章受章 藤原 政治
黄綬褒章
手間や手数を惜しまない、その気持ちを大切にしてきました
2018年黄綬褒章受章 藤原 政治
ふじわら・まさはる/1978年 長谷光機(株)(後にオリンパス光学工業(株)(旧 オリンパス(株)伊那工場)へ合併)入社。
入社時より金属加工に携わり、高精度な試作部品を担当し、社内外で後進を指導。
2013年に現代の名工(厚生労働省 卓越した技能者表彰)に認定される。
現在は㈱エビデント長野製造部製造部管理グループに所属。
技能道場長として、固定概念や今までのやり方を押し付けず、常に時代とともに技術が進んでいる事を意識して、後進の育成、指導にあたっている。
家庭では、家族で過ごす時間を大事にし、薪ストーブの薪づくりや米作りもしている。
金属の形を変えていく楽しみ
高校の普通科卒業でしたので、機械加工の「き」の字も知りませんでした。配属された職場は、顕微鏡の対物レンズを変換するレボルバーユニットの加工を担当していました。その時、初めて旋盤という機械に触ったのです。職場の先輩方に「一(イチ)」から教えてもらっているうちに、金属材料が削られて形が変わっていく様子を純粋に楽しいと感じました。
当時、刃物や治工具を自分たちで作っていた経験が、後に新製品の立ち上げ時の開発や技術メンバーとの設計検討や工程設定、社内外の技能競技大会での入賞 等々に生きたのだと思います。大きなミッションに挑み、やり切った時の達成感や充実感は格別でした。
職場や仕事の種類が変わる度に、そこにいる「すごい人と技」に出会えたことも大きな刺激でした。自分が経験したことのないことを吸収していく楽しみが加わりました。今でも後輩が、国家試験に合格した、競技大会で優勝した・・・、彼らが大きな目標に向かって本気で取り組み結果を出した時、認められた時は自分のことのようにうれしく思います。
顕微鏡の海外展開にも携わり、言葉や食文化、考え方など日本ではできない経験で、自身の視野も広がりました。金属加工が自分も成長させてくれたのだと思います。
周りは名工だらけ、基本の重要さを教えられた
試作部品をつくる職場では、「〇〇の名工」の先輩方だらけでした。私は、小さな仕草も見逃すまいと後を付きまとっていました。しかし、その先輩たちは「教える」ではなく、一緒に考えてくれることが多かったです。答えの導き方や考え方、ご自身の経験はもちろんでしたが理屈や理論を含めた話をよくしていただきました。良い物を作りたかったら手間や手数を惜しまない、いくつになっても好奇心を忘れず勉強し続けること、を常に言われて実践されていました。ものづくりに対しての情熱、チャレンジ精神は私をはるかに凌ぐものだと感じました。
難加工や難問にあたり、悩みに悩んで考えついた結果、実は基本ができていなかったと気づく事は割と多いものです。これをしなければならない理由はここにある、とあらためて理解する事もあると思います。このように悩んだ事は決して無駄では無いし、本気でやったからこそ初めて身に付く貴重なものだと思います。
後輩たちにも、そうやって本気で取り組んで得られる“お金では買えない財産”をたくさん作って自分を高めていってほしいと考えています。